OM-2/黄色舞伎團
die pratze M.S.A. collection 2006」参加公演
「作品No. 4」ーリビングー
Opus 4 -LIVING-


...we will give ourselves to you, but you already have yourself full in your arms and you must throw yourself away to receive us.
It is then that we will show you yourself that you have never felt...

構成・演出:真壁茂夫

今回は佐々木治己のテキストを下敷きにし、
OM-2メンバーと、自動焦点メンバーによる、
コラボレーションともいえる作品。

私は空白が描きたかった。いや、本当は空白以外のものを描こうとしたのだ。
ただ、私は何かを描く理由を失ってしまった、何を描きたいのか、描いたらいいのか分らなくなってしまった。
何も出来なくなった私は自室から出てリビングのソファーに坐った。そこで何をするわけでもなく、坐っていた。
私は何かをする可能性のみを残して、なすべきことを失ってしまったのだ。
何も出来なくなってしまった私とリビングは何かを行う可能性だけが広がっている。
そして何かをしてしまえば、それ以外の可能性を遮断した不可能性の中に私自身がいることになるのだろう。
私は次第に不可能性がない、可能性だけの空間を探しはじめた。
リビングそれ自体が可能性の場所なのだろう、ここは何か明確な意図の基に用意された場所ではない。
ただ可能性の為に用意された一種の空白なのである。
そして私はこの空白を埋めることが出来なくなってしまったのだ。
では、空白とはなんだろう。私を駆り立てる衝動や義務感、焦燥感を生み出す空白とは何だろうか。
私は空白を描くことを考えはじめた。不可能性のない完全なる空白はリビングを見渡したがどこにもなかった。
既に分っている何かを作る場合、それ相応の理由がある。
理由が分らないものにとっては意味のないものに見えるだけだが、理由が分るものにとっては意味のあるものとなるだろう。
しかし、分っていない何かを作る場合、相応の理由を見つけるだけでも至難である。
空白を求める私に空白を求める気持ちが分るものではない、私には分らない私の気持が私をして空白を求めさせている。
私にとって理解するのは困難だが、空白を描く根拠は出来た。
しかし空白とは何だろうか。空白の存在を確認することは出来ない。
そもそも完全な空白は存在するのだろうか。物事、原子から情報、思考に及ぶまで、空白に取って代わって存在している。
空白が空白のみで存在する場合、他の何ものも存在していないことが必要になる。
また、空白を認識する為の境界線が必要だろう。
何かが存在する場合、その何かが存在していない広義な意味での場所があるから何かは存在しているのではないだろうか。
そのときの境界線は一歩踏み出してしまえば、その何かが存在しなくなるというところにある。
このように膨らんでいく空白の存在論に少しでも近付こうと、愚かにも私はソファーから立ち上がり前に一歩踏み出そうとし、振り返った。
そのとき、私がいた場所と私があれこれ空想した場所との境界線に私自身がなっていることに気がついた。
私のいた場所は空白を思わせた。
注意深く見詰め、再び坐ろうとしたときには空白とは言えない理由のあるものに溢れていた。

佐々木治己
60億人の為の演劇//自動焦点(旧演劇崇拝◎自動焦点)主宰。劇作家、演出家、日本演出者協会国際部所属。




2006年3月24日(金)〜28日(火)
神楽坂 die pratze
開演時間:19:30、26日(日)のみ18:30
開演の30分前より受け付け開始
<チケット>
前売り Advance/¥2,500(学生 Student/¥2,000) 
当日 Box office/¥3,000(学生 Student/¥2,500)
フェスティバル通しチケット(前売りのみ、die pratzeで予約受付)
一般 Normal/ ¥7,000 学生 Student/ ¥6,000
*学生は要学生証
<チケット取り扱い>
チケットぴあ 0570-02-9988 
<予約・問い合わせ>
E-mail: info@om-2.net
神楽坂 die pratze 03-3235-7990 (火曜定休 12:30〜17:30)

出演者:
佐々木敦、中井尋央、柴崎直子、丹生谷真由子、村岡尚子、
江島嘉政、大根田真人
三村順、宮本享平、青木佑美子、佐藤一茂、他

スタッフ:
テキスト/佐々木治己
舞台美術/山下匡紀、速水まりや、寺澤勇樹、五木田唯衣
舞台監督/高橋幸平 照明/三枝淳 音響/畑圭 作曲/佐々木敦、他 映像/赤瀬靖治 小道具/池田包子 
宣伝美術/浅見啓介 写真/田中英世、青木司、Otto Muehlethaler 記録映像/船橋貞信 制作/村岡尚子
主催:OM-2
助成:日本芸術文化振興基金

企画・製作: Workom
協賛:die pratze
協力:高橋弥生、佐久間幸子、小室朝子、殿岡由佳子、熊倉優子、笠松環 、
J・佐藤、田口博史、高松泰治、吉村二郎、/ 内田久美子、坂口奈々、掛川祐子
60億人の為の演劇//自動焦点、楽園王、劇団泣断

 

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